トマトを買いに出かけて、なんとなく立ち寄った魚屋さんで、あんまりいいブリがあったので買う。照り焼きもいいけれど、こっくりと煮物もいいなあと思って大根を買って帰る。
帰ってきて思う。僕はブリを買うつもりじゃなかったんだ。
珍しく台所でビールを飲んでいる。
そう。
カレーを作っているのだ。深夜なのに。
カレーばかりは、食べるときに飲むビールよりも作りながら飲むビールのほうがずっとおいしい。
煮込んでいるときに、意味もなく味見をしてはビールをひとくち。これがおいしい。
外は雨だ。
ここはひとつ、ちゃんとカレーを作ろうと思ったのだ。チキンのカレー。
鶏モモ肉は、塩、胡椒、カレー粉、白ワインで下味をつける。
強火でしっかりと焼きつける。
ここで白ワインを入れる。
思いのほか火が入ってびっくりした。
白ワインの水分がなくなるまで煮る。
一方、こちらはたまねぎ。
飴色になるまで炒めていくのであるが、時間短縮のために電子レンジで15分ほど加熱してから炒める。
たっぷり4個分。
鍋にサラダ油とクミンシードを入れ、香りが出るまで炒めてからたまねぎを入れる。
かき混ぜる手は休めず、じっくり炒めていく。
たまねぎが飴色になったら、生姜のすりおろし、にんにくのみじん切り、ローリエをいれ、さらに炒める。
カレー粉を入れ、練るようにしばらく炒める。
これでカレーペーストの完成。
先程の鶏肉、湯剥きしたトマト、水、コンソメキューブ1個を鍋に入れて、煮込んでいく。
この辺から、おもむろにビールを取り出す。
カレーに入れようと思って買ってきたピーナッツもつまんでしまう。
部屋ではジョアン・ジルベルトが歌っている。あー、なんてゆるいんだ。
外は雨だ。
換気扇の向こう側では、このカレーの匂いがあたりに広がっているはず。深夜なのに。
実にいい気分だ。
ビールは既に2本空いている。
さて、ピーナッツは粗く砕いてカレーの中へ。
この歯ごたえがおいしい。
最後に、塩、胡椒で味を調えたらバターをたっぷり、豪快に。
そしてカレー粉、ガラムマサラで仕上げる。
カレーはおいしくできた。
でも、作りながら実にいい気分でビールを飲んでいたし、味見もたくさんしたからおなかいっぱいである。
このカレー、今日は食べなくてもいいや。
そう。
カレーを作っているのだ。深夜なのに。
カレーばかりは、食べるときに飲むビールよりも作りながら飲むビールのほうがずっとおいしい。
煮込んでいるときに、意味もなく味見をしてはビールをひとくち。これがおいしい。
外は雨だ。
ここはひとつ、ちゃんとカレーを作ろうと思ったのだ。チキンのカレー。
鶏モモ肉は、塩、胡椒、カレー粉、白ワインで下味をつける。
強火でしっかりと焼きつける。
ここで白ワインを入れる。
思いのほか火が入ってびっくりした。
白ワインの水分がなくなるまで煮る。
一方、こちらはたまねぎ。
飴色になるまで炒めていくのであるが、時間短縮のために電子レンジで15分ほど加熱してから炒める。
たっぷり4個分。
鍋にサラダ油とクミンシードを入れ、香りが出るまで炒めてからたまねぎを入れる。
かき混ぜる手は休めず、じっくり炒めていく。
たまねぎが飴色になったら、生姜のすりおろし、にんにくのみじん切り、ローリエをいれ、さらに炒める。
カレー粉を入れ、練るようにしばらく炒める。
これでカレーペーストの完成。
先程の鶏肉、湯剥きしたトマト、水、コンソメキューブ1個を鍋に入れて、煮込んでいく。
この辺から、おもむろにビールを取り出す。
カレーに入れようと思って買ってきたピーナッツもつまんでしまう。
部屋ではジョアン・ジルベルトが歌っている。あー、なんてゆるいんだ。
外は雨だ。
換気扇の向こう側では、このカレーの匂いがあたりに広がっているはず。深夜なのに。
実にいい気分だ。
ビールは既に2本空いている。
さて、ピーナッツは粗く砕いてカレーの中へ。
この歯ごたえがおいしい。
最後に、塩、胡椒で味を調えたらバターをたっぷり、豪快に。
そしてカレー粉、ガラムマサラで仕上げる。
カレーはおいしくできた。
でも、作りながら実にいい気分でビールを飲んでいたし、味見もたくさんしたからおなかいっぱいである。
このカレー、今日は食べなくてもいいや。
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ゴールデンウィーク中に、『蠱惑的なハンバーグの世界』の集まりがあった。
ただハンバーグを作ってワインを飲むだけなのだけれど。
そのときのハンバーグソースが残っていたのである。
にんにくとたまねぎとマッシュルームを炒めて、赤ワインで1時間くらい煮込んで、ハインツのデミグラスソースと合わせてさらに煮込んだもの。
これが。焼きたて、外側カリカリのハンバーグと合わさると、蠱惑的な味になるのだ。
さて、余ったハンバーグソースは冷凍してもよかったのだが、冷凍庫もいっぱいなので、そのまま焼いた牛肉を足して、ハッシュドビーフにすることにしたのである。
たまねぎとにんにくを炒める。
たまねぎが半透明になったくらいで一旦取り出しておく。
牛肉を焼く。強火で、しっかり焼色をつけるように焼く。
肉に焼色がついたら、たまねぎとマッシュルームを戻して、赤ワインをどぼどぼと入れる。
赤ワインの水分が少なくなってきたら、ハンバーグソースの残りを入れる。
軽く煮込んで、塩、胡椒で味を調え、最後にバターをひとかけで完成。
のはずであった。
しかし、この時点で味見をして驚いた。
味が濃すぎる。
そう。ハンバーグソースの時点で、赤ワイン1本が凝縮されていて、さらにしっかりめに塩、胡椒で味付けしてあったのだ。
そこにさらに赤ワインもう1本入れて煮込んだ。牛肉にも塩、胡椒してある。
これでは味も濃くなる。
結局、かなりの量の水でのばして、ようやく食べられるようになった。
けっこう手間をかけたのだが…。
その手間が仇となる。
さて、この日野菜もしっかり食べましょうと、温野菜サラダも用意したのである。
春キャベツ、アスパラガス、ヤングコーン、新たまねぎ、新じゃが。じゃがいもだけ別に茹でて、あとはざくざくと切って電子レンジで加熱。
ワインビネガー、粒マスタード、塩、胡椒、オリーブオイルでドレッシングを作り、それを和える。
野菜はさわやかでおいしかった。
ワインも用意して、けっこう盛り上がっていたのであるが。
料理の味が濃すぎるというのはもう致命的で、どうにもリカバリーできない。
うーむ。
まあ、こんなこともあるか。
しかしがっくりとうなだれて、あまり食も進まない。
ただハンバーグを作ってワインを飲むだけなのだけれど。
そのときのハンバーグソースが残っていたのである。
にんにくとたまねぎとマッシュルームを炒めて、赤ワインで1時間くらい煮込んで、ハインツのデミグラスソースと合わせてさらに煮込んだもの。
これが。焼きたて、外側カリカリのハンバーグと合わさると、蠱惑的な味になるのだ。
さて、余ったハンバーグソースは冷凍してもよかったのだが、冷凍庫もいっぱいなので、そのまま焼いた牛肉を足して、ハッシュドビーフにすることにしたのである。
たまねぎとにんにくを炒める。
たまねぎが半透明になったくらいで一旦取り出しておく。
牛肉を焼く。強火で、しっかり焼色をつけるように焼く。
肉に焼色がついたら、たまねぎとマッシュルームを戻して、赤ワインをどぼどぼと入れる。
赤ワインの水分が少なくなってきたら、ハンバーグソースの残りを入れる。
軽く煮込んで、塩、胡椒で味を調え、最後にバターをひとかけで完成。
のはずであった。
しかし、この時点で味見をして驚いた。
味が濃すぎる。
そう。ハンバーグソースの時点で、赤ワイン1本が凝縮されていて、さらにしっかりめに塩、胡椒で味付けしてあったのだ。
そこにさらに赤ワインもう1本入れて煮込んだ。牛肉にも塩、胡椒してある。
これでは味も濃くなる。
結局、かなりの量の水でのばして、ようやく食べられるようになった。
けっこう手間をかけたのだが…。
その手間が仇となる。
さて、この日野菜もしっかり食べましょうと、温野菜サラダも用意したのである。
春キャベツ、アスパラガス、ヤングコーン、新たまねぎ、新じゃが。じゃがいもだけ別に茹でて、あとはざくざくと切って電子レンジで加熱。
ワインビネガー、粒マスタード、塩、胡椒、オリーブオイルでドレッシングを作り、それを和える。
野菜はさわやかでおいしかった。
ワインも用意して、けっこう盛り上がっていたのであるが。
料理の味が濃すぎるというのはもう致命的で、どうにもリカバリーできない。
うーむ。
まあ、こんなこともあるか。
しかしがっくりとうなだれて、あまり食も進まない。
東京・銀座『美食倶楽部』―。
椀方を務める良三くんが、海原雄山に言う。
「先生、長野から新そばが届きましたので、今日の昼はそばを打ってみました。」
「ほう 長野の新そばか。」
雄山、うれしそう。
「ふむ、新そばらしい良い香りだ。」
差し出す良三くんもうれしそう。
長野から届いた新蕎麦で、良三くんが打った蕎麦。
新蕎麦の時期の打ちたての蕎麦。贅沢である。
しかし、不穏な空気だ。
雄山、怒りの表情。
ねぎと山葵の乗った皿を持ち上げて―
ガツ
「あっ!」
!
何が何だか訳がわからない、という表情の良三くん。
「せ……先生。」
「なにか私に落ち度が……」
ズウー
無視して食べる。
ひどい話だ。
雄山を怒らせたのは、ねぎと山葵である。
「この大たわけが!」
良三くんを罵ったあと、雄山はこう続ける。
「新そばの香りと、ワサビの香りとどちらが強い?新そばの微妙な味わいと、長ネギの味とどちらが強い!?」
「元来 そばを食べるのに薬味など不要、ことにとれたての新そばならなおのこと。清新、軽妙にして風雅な味わいがワサビとネギの香りと味で壊されてしまう。」
「年を越して夏場近くなり、風味もすっかり落ちた古いそばならまだしも、せっかくの新そばに、この薬味をつける鈍感さは許せぬ。」
なるほど。
そりゃあ良三くんがいけないね。
だからといって皿を投げつけなくたっていいと思うけれど。
さて、そんなキツめの空気感をよそに、僕は昼日中から山葵を擂っている。
この間、八百屋さんで山葵が安かったから買っておいたのだ。びっくり200円。
しかし、すっかり忘れて冷蔵庫の中で黒くなりかけていたのだ。慌てて食べることにした。
だから昼は蕎麦である。
乾麺。
清新、軽妙にして風雅な味わいとは言い難いが、茹で時間を守って、しっかり洗えば乾麺の蕎麦だってけっこうおいしい。
おろしたて生山葵、さわやかでいい香りだ。
椀方を務める良三くんが、海原雄山に言う。
「先生、長野から新そばが届きましたので、今日の昼はそばを打ってみました。」
「ほう 長野の新そばか。」
雄山、うれしそう。
「ふむ、新そばらしい良い香りだ。」
差し出す良三くんもうれしそう。
長野から届いた新蕎麦で、良三くんが打った蕎麦。
新蕎麦の時期の打ちたての蕎麦。贅沢である。
しかし、不穏な空気だ。
雄山、怒りの表情。
ねぎと山葵の乗った皿を持ち上げて―
ガツ
「あっ!」
!
何が何だか訳がわからない、という表情の良三くん。
「せ……先生。」
「なにか私に落ち度が……」
ズウー
無視して食べる。
―『美味しんぼ 32巻』第4話 薬味探訪より/作:雁屋哲 画:花咲アキラ
(1991,小学館)
(1991,小学館)
ひどい話だ。
雄山を怒らせたのは、ねぎと山葵である。
「この大たわけが!」
良三くんを罵ったあと、雄山はこう続ける。
「新そばの香りと、ワサビの香りとどちらが強い?新そばの微妙な味わいと、長ネギの味とどちらが強い!?」
「元来 そばを食べるのに薬味など不要、ことにとれたての新そばならなおのこと。清新、軽妙にして風雅な味わいがワサビとネギの香りと味で壊されてしまう。」
「年を越して夏場近くなり、風味もすっかり落ちた古いそばならまだしも、せっかくの新そばに、この薬味をつける鈍感さは許せぬ。」
なるほど。
そりゃあ良三くんがいけないね。
だからといって皿を投げつけなくたっていいと思うけれど。
さて、そんなキツめの空気感をよそに、僕は昼日中から山葵を擂っている。
この間、八百屋さんで山葵が安かったから買っておいたのだ。びっくり200円。
しかし、すっかり忘れて冷蔵庫の中で黒くなりかけていたのだ。慌てて食べることにした。
だから昼は蕎麦である。
乾麺。
清新、軽妙にして風雅な味わいとは言い難いが、茹で時間を守って、しっかり洗えば乾麺の蕎麦だってけっこうおいしい。
おろしたて生山葵、さわやかでいい香りだ。
―『料理歳時記』 辰巳浜子(1977 中公文庫)
辰巳浜子の『料理歳時記』の”ピース”の項にこんな件があった。それはそれは出会いのよい小鉢。食べてみたい。
本書の中に『農業技術の長足の進歩』により『野菜の季節感がすっかり狂って戸惑うばかり』とある。
婦人公論に連載されていたのが昭和37年から43年までということだから、40年以上前でさえそうなのだ。
気をつけていないと、うっかり忘れてしまいそうな野菜の旬。それでもやっぱり蚕豆やグリーンピースが出てくると嬉しい気持ちがするものである。
さて、ゴールデンウィーク初日の昼。午前中から食べるものが決まっていたのだ。グリーンピースのクリームパスタである。そういう気分だったのだ。
グリーンピースの香りとベーコンの塩気と旨みを生クリームに溶かしたようなソース。
グリーンピースは、塩茹でする。
ところで、先程の『料理歳時記』にはこうある。
―ピースを茹でる時に、豆がやわらかくなったといっても、すぐに笊にあげてしまってはいけません。
しまった。知らなかった。茹だったらすぐにザルにあげてしまった。
アスパラガスは、根元の皮を剥き、3等分する。
フライパンにバターを融かし、たまねぎとベーコンを炒める。
たまねぎが半透明になったくらいで、茹でたグリーンピースを入れて、白ワインをふる。
ワインの水分が飛んだら生クリームを入れる。
胡椒をして、味見をする。塩気が足りなければ入れるが、後からチーズを入れるのでその分も考慮する。
アスパラガスはパスタと一緒に茹でる。
麺が茹で上がる3分くらい前に、パスタ鍋に入れる。
麺が茹で上がったら、アスパラとともにソースに絡める。
パルミジャーノ・レッジャーノのすりおろしも入れて、和えたら完成。
春の香りのパスタである。
午前中からずっとこれを食べることだけが頭にあったからかもしれないけれど、なんだかとってもおいしかった。
ランチビール。
珍しくHOLSTEN(ドイツ)を買ってみた。ホップの香りが強いビール。
香りが強いけど、日本のビールに近い気もする。
料理歳時記の”ピース”の項は、季節ごとの分類だと夏に属している。
なるほど、気がつけば明日から5月だ。
dandy-ism n. おしゃれ,おめかし,だて.
先日、友人があるバーに連れて行ってくれた。
オールドボトルばかり揃えているというお店である。
そこで飲んだのはWHITE HORSEの1940年代のものだった。
それはもう、おいしかったさ。甘露ですよ。
ボトルも見せてくれたけれど、コルク栓で風格のある瓶だった。
じっくり味わうスコッチは深いね、なんて思うのであった。ダンディズムだ。
そのとき、出してくれたアテが無花果(いちじく)の焼き菓子だったのだ。スイーツである。
これには少々驚いたが、なるほど悪くない。
いや、いい。すごくいい。
そこで本日は、珍しくスコッチ・ウィスキーをちびちびと舐めている。
胡桃のパウンドケーキを食べながらである。
大事に食べる。
スコッチ・ウィスキーとパウンドケーキ。
これもきっとダンディーのひとつの形だろう。
おいしいし。
―リーダーズ英和辞典(研究社)
先日、友人があるバーに連れて行ってくれた。
オールドボトルばかり揃えているというお店である。
そこで飲んだのはWHITE HORSEの1940年代のものだった。
それはもう、おいしかったさ。甘露ですよ。
ボトルも見せてくれたけれど、コルク栓で風格のある瓶だった。
じっくり味わうスコッチは深いね、なんて思うのであった。ダンディズムだ。
そのとき、出してくれたアテが無花果(いちじく)の焼き菓子だったのだ。スイーツである。
これには少々驚いたが、なるほど悪くない。
いや、いい。すごくいい。
そこで本日は、珍しくスコッチ・ウィスキーをちびちびと舐めている。
胡桃のパウンドケーキを食べながらである。
大事に食べる。
スコッチ・ウィスキーとパウンドケーキ。
これもきっとダンディーのひとつの形だろう。
おいしいし。
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