我が台所のほぼ中央に鎮座する、どう見てもゴミバケツという風采のこいつ。
こいつを僕は何に使っているのか。
ゴミバケツとして使っているのである。
これを使う前は、ごく一般的なブラバンシアのペダルビンを使っていた。足踏みペダルを踏むと蓋がぱかっと開くあいつだ。真っ白。
便利だったけど、真っ白が汚れていくのがイヤだった。
台所に置いてあれば、どうしたって汚れる。油と埃が混ざったあのベタベタがいつの間にか蓋の上に薄く降り積もっている。もとが真っ白のピカピカなものだから、その様子は何とも情けなくて胸が塞がる。きれいに掃除しても、時間がたてば同じことだ。またあのいやったらしいベタベタが…。
そんなある日、吉祥寺の『a ・ Pex』という北欧の中古家具店でこのバケツに出会ったのだ。『a ・ Pex』の家具は値段が高いのでとても買えない。見るだけ。そんな気持ちで入ったら、こいつがいた。しかも3000円。すぐに買って帰った。
いつ頃のものかわからないけど、古いものだ。形もちょっと歪んでるし、全体に錆を纏っている。しかし、歪みも錆もこのバケツはちゃんと受け入れている。寧ろ、それをモノとしての力に変えているようにも思える。戦士の疵痕が勲章なのと同じように、このバケツは錆びて歪んでも実に堂々としている。
僕が古いものを好きなのはそこだ。
モノは使っていれば、汚れる。疵がつく。壊れてしまうことだってある。でもそうしているうちに、ふと、疵や汚れが魅力に変わる瞬間があるのだ。
僕はブラバンシアのペダルビンにその魅力を感じることができなかった。
さて、このバケツが来てからというもの、汚れのことなんか気にならない。たまに雑巾で拭くだけ。何せ汚れは力だ。汚すことでバケツを育てているような気さえする。
ところで、買ってきて洗っているときに発覚したのだが、こいつ、水が漏るのだ。バケツのくせに。中にゴミ袋を入れて使っているから、実用上は問題ないのだけれど。
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『Pocketful of Poetry』
Mindy Gledhill
この数ヶ月、僕は「ミンディ・グレッドヒルは分かってる!」と叫び続けてきた。この人のアルバムからはポップってのはこういうものさ、という自信が滲み出ていると思う。tr. 2『Trouble No More』がツボ中のツボ。僕の好物ばっかりいっぱい詰まってる。決して大袈裟な表現ではなく、棄て曲なし、最高に幸せな30分あまり。
『D'ACCORD』
SERGE DELAITE TRIO with ALAIN BRUEL
アトリエサワノのピアノトリオが大好きです。2枚同時発売のうちの1枚。これはピアノトリオにアコーディオンを加えた演奏。明るい休日のランチ。冷えた白ワイン飲みたくなる感じ。
J.S. Bach/Goldberg Variations
Simone Dinnerstein
ゴルトベルク変奏曲からグールドの影を拭いきれないのは仕方がない。この人の演奏には”脱・グールド”みたいな気負いはなく、曲に対してもグールドに対しても愛情に満ちていて、丁寧で、やさしくてすごく好きです。