そっちはどうだい うまくやってるかい
こっちはこうさ どうにもならんよ
今んとこはまあ そんな感じなんだ
すっかり春らしくなったので、サニーデイの『東京』を聴く。
この『東京』というアルバムは1996年の発売で、この年、僕は大学に入学した。
実はこのころ、そんなに熱心にサニーデイ・サービスを聴いていた記憶はない(ちゃんと聴くようになるのはこの2年後くらい)のだけれど、それでも少し暖かくなって空気が緩んでくると、このアルバムがリアルに響くわけです。
さて、それから10年後の2006年―。
発売10周年の節目ということで、曽我部恵一が独りで『東京』を再演した。曲順もすべて同じ。もう、企画自体がにくい。
その模様を収録したのがこちら。
10年経って、『そっちはどうだい』って言われて、でもこっちもどうにもならん。あまり変わってません。
このライブアルバムは10,000枚限定。
おそらく、オリジナルの『東京』を聴いていた人しかこれを買わないだろう。これを聴いた10,000人の人が10年前と今の『そっちはどうだい』に対する返答を較べてみたりしたのかもしれないと思うと、ちょっと面白かった。
というか、それからさらに2年(正確には1年5ヶ月)も経ったのだ。
うーん。
ジョン・レノンとポール・マッカートニーが『Apple Corps』の設立を発表したのは1968年5月15日であった。
同年8月、アップル・レコードから初めて発売されたのが、メリー・ホプキンの『悲しき天使』(原題は『Those were the days』)である。
何度見てもわけのわからないジャケット写真だ。
メリー・ホプキンが公園みたいなところで、ギターを持って物憂げに佇んでいる。
しかもスカートの丈がかなり短い。きわどいくらい短い。
普通こんなことをしていたら、ちょっと変な人である。
この曲、作詞・作曲がGene Raskinとなっているが、原曲はロシア民謡であるらしい。なるほど、言われてみると確かにロシアっぽい。アップル第一弾シングルとして、ポール・マッカートニーのプロデュースで発売され、全世界で500万枚を超えるヒットを記録する。
それにしても、Those were the daysのタイトルがなぜ『悲しき天使』になってしまったのか。謎である。
でも、実はこの手の意味のわからない邦題というのが大好きだ。『悲しき~』、『哀しみの~』、『愛の~』という類のやつ。大抵は原題の意味を踏襲していることが多いが、これに至っては完全に無視している。天使って…。一体どこから持ってきたんだ?
もちろん曲も好きです。とても魅力のある歌だと思う。一度メロディーを耳にしてしまうと離れなくなる。
ところで、彼女のファーストアルバム『ポストカード』のジャケットにはこんな写真が印刷されている。
背の高い植物の向こう側で、腰に手をあてて、『もう!』みたいな表情をしている。
こういう態度をとる女性を、僕はあまり好きではない。
『おはよう』
/曽我部恵一ランデブーバンド
(ROSE RECORDS,2007)
『スタジオで輪になって演奏がはじまる。できるだけ静かな音で。譜面もヘッドフォンも使わなかった。ダビング行為もいっさいなし。ぜんぶがぜんぶ一発録り。「そのときそこで」鳴っていた音である。』と曽我部君自身が書いているとおりの音だ。
目の前で顔を突き合わせながら演奏した音楽。呼吸まで聞き取れそうな素晴らしいアルバムです。
広がって来る不安におそわれ
「明日になれば」「朝が来れば」とか
昨日もそう思った
『若者たち』/サニーデイ・サービス(1995)
曽我部君がそう歌ってから、もう12年以上経つのだなあ。
今回のランデブーバンドの音は、すごく大人な感じ。
ところで、サニーデイ・サービスには『FUTURE KISS』という、幼稚園で園児たちを観客に行ったライブアルバムがあるのだが、その最後のMCで曽我部君は「いっぱい勉強して、いい大人になってください」と言っている。
今回のアルバムのライナーノートで安田謙一氏はこのMCを取り上げ、「このアルバムはその言葉への立派な返答のように思える。オトナになったコドモ…のオトナな歌。」と書いている。
なるほどねえ。なかなか穿った見方だと思う。
オトナになりきれないいいオトナが、実はここにもいます。
余談だが、『FUTURE KISS』の最後の部分。この幼稚園の先生(と思われる女性)の声で、
「それでは、もうひとつのお楽しみ。ハシモト先生が夏になるといっちばん楽しみにしていることをやろうかなー。」
と言ったところで録音が終わっている。
ハシモト先生が楽しみしていること…。
何だろう。気になる。
『ODESSEY & ORACLE』
THE ZOMBIES (1968)
ゾンビーズについて語るとき、僕は涙を流さずにはいられない。この涙はみなさんに見えているだろうか?
ロック史上、最も不遇を託ったアルバムといえば、ビーチ・ボーイズ(というかブライアン・ウィルソン)の『Pet Sounds』で衆目の一致するところと思うが、この『ODESSEY & ORACLE』もそれに引けをとらない。
1964年に英DECCAレコードからデビューしたゾンビーズは、1stシングル『She's Not There』がいきなり大ヒット。ブリティッシュ・インベイジョンの波に乗り、アメリカでも広く受け入れられる。しかしその後は意欲的な作品を発表するも商業的に成功せず、人気は下降。
CBSレコードに移籍後、1968年には2ndアルバム『ODESSEY & ORACLE』を制作するも、完成を待たずボーカルのコリン・ブランストーンが脱退。アルバム完成後、バンドも解散。
翌69年米CBSのプロデューサー、アル・クーパーに見出され、『Time of the Season』をシングルカット。200万枚を超える大ヒットを記録するも、バンドはもうない…。そのためか偽ゾンビーズが出現。ゾンビーズを名乗ってライブ活動を行い荒稼ぎしたらしい。
レコード会社の要請にもかかわらず再結成には応じなかった。
(以上、ネット上の情報をもとにまとめました)
ゾンビーズのかわいそうなのは、その音楽が非常に素晴らしかったところにある。2ndアルバムに先駆けて発売されたシングル『Friends of Mine』にしても『Care of Cell 44(独房44)』にしても、なぜヒットしなかったのかわからない。極上のポップだ。これが売れないなら、どうすりゃいいんだ?という気持ちだったと思う。ほんとに。
アルバム『ODESSEY & ORACLE』はビートルズやビーチ・ボーイズの影響を強く受けた内容だが、メロディーの綺麗さ、コーラス、アレンジ、演奏技術、どれをとっても非の打ち所がないくらい。中心メンバーであるキーボードのロッド・アージェント、ベースのクリス・ホワイトの楽曲はほんとにすごい。レノン=マッカートニー、ブライアン・ウィルソンという先駆者がいるにせよ、充分に革新的だ。
大名盤です。
かわいそうなゾンビーズ…。一歩間違えば一躍時代の寵児になってもおかしくないくらいの内容だったのに。
ちなみに大ヒット曲『Time of the Season』は数年前、日産自動車のCMで使われていたのでご存知の方も多いことと思う。
僕は、クリスの手になる『Friends of Mine』が好きです。
僕もあなたも対して*変わりはしない
そんな気持ちであなたを見ていたい どんな人でも僕と大差はないのさ
拝啓、ジョン・レノン
そんな気持ちで世界を見ていたい
*原文ママ
―『拝啓、ジョンレノン』/真心ブラザーズ
(Ki/oon SONY RECORDS,1996)
今なぜ、突然真心ブラザーズなのか。
年末に真心のライブに行ってきたからだ。
彼らは昔とぜんぜん変わらず、倉持のボーカルも桜井のレス・ポール・カスタムのゴージャスな音も健在だった。
真心ブラザーズが好き、という人にはあまり出会わない。しかし、僕にとっては青春なのでした。
『拝啓、ジョン・レノン』が出たとき、僕は19歳。そして、ビートルズに思いっきりかぶれていた時期だった。こういうことをしみじみと思い出したりするのは、歳をとったからなんだろうなあ、と思う。
発売当時、『ジョン・レノン バカな平和主義者』という歌詞に噛み付いて、放送禁止騒ぎがあった。しかし、ジョン・レノンに対するこれほど秀逸なオマージュはちょっと他には見当たらない。『現実見てない人』と切り捨てるあたり(もちろん愛情をこめて微笑むように)、最高です。おそらくジョン・レノンだって神格化されることなど望んではいなかったろうと思う。
さて、真心のおすすめを挙げておく。
『KING OF ROCK』(1995)
「THE真心ブラザーズ」から「真心ブラザーズ」に変わった一作目。超ハイテンションの名作。
『サマーヌード』(1995)
当時アルバム未収録だった(今はベスト盤に収録されている)。桜井秀俊の才能を堪能できる名曲。シングル盤、8cmCDだったなあ…。
『GREAT ADVENTURE』(1996)
『拝啓、ジョン・レノン』、『空にまいあがれ』所収。これがいちばん好き。
『I will Survive』(1998)
すぎむらしんいち氏によるジャケットが秀逸。桜井色が強い、おしゃれ・サウンドなアルバム。
『GOOD TIMES』(1999)
なんか、いろいろやってるなあ、という感じ。trk.3『突風』が名曲。
以上、アルバムはすべて初回盤で持っているのだが、中古市場で値上がりの気配は皆無である。
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『Pocketful of Poetry』
Mindy Gledhill
この数ヶ月、僕は「ミンディ・グレッドヒルは分かってる!」と叫び続けてきた。この人のアルバムからはポップってのはこういうものさ、という自信が滲み出ていると思う。tr. 2『Trouble No More』がツボ中のツボ。僕の好物ばっかりいっぱい詰まってる。決して大袈裟な表現ではなく、棄て曲なし、最高に幸せな30分あまり。
『D'ACCORD』
SERGE DELAITE TRIO with ALAIN BRUEL
アトリエサワノのピアノトリオが大好きです。2枚同時発売のうちの1枚。これはピアノトリオにアコーディオンを加えた演奏。明るい休日のランチ。冷えた白ワイン飲みたくなる感じ。
J.S. Bach/Goldberg Variations
Simone Dinnerstein
ゴルトベルク変奏曲からグールドの影を拭いきれないのは仕方がない。この人の演奏には”脱・グールド”みたいな気負いはなく、曲に対してもグールドに対しても愛情に満ちていて、丁寧で、やさしくてすごく好きです。