引越しの荷造りのため、必要最低限のもの残して食器は早々にダンボールに詰めてしまった。大量の食器たちがいちばん厄介だと思ったからだ。
引越し前1週間は料理はしなかった。食べて帰ってきたり、買ってきて食べていた。詰めずに残しておいた食器はティーマのスクエアのやつとマグカップ、プレスガラスのコップがひとつと古い琺瑯の深めのお皿が1枚。
琺瑯のお皿がなぜ出ていたのか。それは荷造りをしている最中だというのに買ってしまったからである。
この期に及んでまだ買うのか。自問しないでもなかったが、出会ってしまったもんはしょうがないのである。
これがその琺瑯のお皿だ。色がすごくきれいなのだ。
何でも昔、旧日本海軍で使われていたものらしい。
(ちなみに盛られているのは、さばの味噌煮の缶詰)
底に碇のマークが押してある。
パンをのせたりもした。
実際普段使うのには、これくらいのサイズのもの(直径約16cm、高さ約3cm)があれば大抵はこと足りてしまうのだ。他になければ、これだけでもけっこういろいろ使える。
ところでこの琺瑯の海軍皿、盛り付けたたべものに独特の雰囲気を与える。この古さと『海軍で兵隊が実際に使っていた』という事実がそうさせるのか。
さば缶を盛り付ければ、食糧難の時代に薄暗い裸電球の下で最後の缶詰を食べている気分になるし、パンを盛れば、ヨーロッパの田舎の貧乏な村で固くなった粗末なパンをもそもそと齧っている気分になる。うすいスープを入れたら、旧ソ連のラーゲリ(強制収容所)の食事のような雰囲気を醸し出しそうだ。まるでソルジェニーツィンの小説みたいに。
どれもすごくネガティブだけれど…。
でもおいしく感じるのは、普通に考えれば何てことのないたべものを、まるでやっとありついた貴重なもののように変える力をこのお皿が持っているからじゃないかと思う。
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『Pocketful of Poetry』
Mindy Gledhill
この数ヶ月、僕は「ミンディ・グレッドヒルは分かってる!」と叫び続けてきた。この人のアルバムからはポップってのはこういうものさ、という自信が滲み出ていると思う。tr. 2『Trouble No More』がツボ中のツボ。僕の好物ばっかりいっぱい詰まってる。決して大袈裟な表現ではなく、棄て曲なし、最高に幸せな30分あまり。
『D'ACCORD』
SERGE DELAITE TRIO with ALAIN BRUEL
アトリエサワノのピアノトリオが大好きです。2枚同時発売のうちの1枚。これはピアノトリオにアコーディオンを加えた演奏。明るい休日のランチ。冷えた白ワイン飲みたくなる感じ。
J.S. Bach/Goldberg Variations
Simone Dinnerstein
ゴルトベルク変奏曲からグールドの影を拭いきれないのは仕方がない。この人の演奏には”脱・グールド”みたいな気負いはなく、曲に対してもグールドに対しても愛情に満ちていて、丁寧で、やさしくてすごく好きです。