パスタばかり作っている僕が言うのもなんだが、やっぱり日本に生まれて日本に育ったからには白いごはんが何よりだと思う。
何はなくともとりあえずごはんさえあれば。
米でなくともパスタやらパンやら、今日び口に入る主食はいくらでもあるけれど、やっぱり米びつの底が見えればじんわりわびしい。米の量が減っていけば、風が吹けば飛ぶようなブリキの軽さがことのほか情けなくて身が細る。こんなときだ、自分の暮らしが実は米びつのなかのひとつぶひとつぶの米に支えられているのを思い知るときは。
知足「ブリキの米びつ」/平松洋子
『平松洋子の台所』(2001,ブックマン社)所収 より
そうなのだ。
忘れてしまいがちだけれど、まずは飢えずにごはんを食べられることをありがたく思っていなければ。
そんな思いできちんとごはんを炊いてみた。いつもいつもではないけれど、炊飯用の土鍋を使う。無印で買った『土釜おこげ』というやつだ。
炊きたてのごはん。
実にいい匂いだ。
土鍋を使ってごはんを炊くと、ふっくら炊き上がるだけじゃない。
香ばしいおこげができあがる。
たまごかけごはん。
炊きたてごはんでこれをやると、格別においしい。
これ以上何の贅沢があるだろう、という気分になる。
さて、最近スグレモノを買った。
梅の木をくりぬいて作った杓文字である。
きれいな木目だ。
炊き上がったごはんを混ぜるとき、ごはんつぶを潰すことがないように先が薄く削ってある。
今まではエンボス加工された白いプラスティックの杓文字を使っていた。ごはんつぶがくっつかなくて大層便利な代物だが、遺憾ながらモノとしての面白みには欠ける。
それに、使っていくうちに表面のフッ素コーティングやらが落ちてだんだん性能が劣化していくあたりがどうもイヤだ。
梅の木の杓文字はもちろんきちんと湿らせてから使わないと、ごはんつぶはどんどんくっついていく。でもそんなのは湿らせてから使えばいいだけの話だ。
それよりも使っていくうちに表情をだんだんと変えていく木目の面白さや、手に馴染んでいく木肌のぬくもりをとりたい。
2年経ち、3年経ったころ、この杓文字がどんな表情を見せてくれるか。
今からとても楽しみである。
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『Pocketful of Poetry』
Mindy Gledhill
この数ヶ月、僕は「ミンディ・グレッドヒルは分かってる!」と叫び続けてきた。この人のアルバムからはポップってのはこういうものさ、という自信が滲み出ていると思う。tr. 2『Trouble No More』がツボ中のツボ。僕の好物ばっかりいっぱい詰まってる。決して大袈裟な表現ではなく、棄て曲なし、最高に幸せな30分あまり。
『D'ACCORD』
SERGE DELAITE TRIO with ALAIN BRUEL
アトリエサワノのピアノトリオが大好きです。2枚同時発売のうちの1枚。これはピアノトリオにアコーディオンを加えた演奏。明るい休日のランチ。冷えた白ワイン飲みたくなる感じ。
J.S. Bach/Goldberg Variations
Simone Dinnerstein
ゴルトベルク変奏曲からグールドの影を拭いきれないのは仕方がない。この人の演奏には”脱・グールド”みたいな気負いはなく、曲に対してもグールドに対しても愛情に満ちていて、丁寧で、やさしくてすごく好きです。