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トマトを買いに出かけて、なんとなく立ち寄った魚屋さんで、あんまりいいブリがあったので買う。照り焼きもいいけれど、こっくりと煮物もいいなあと思って大根を買って帰る。 帰ってきて思う。僕はブリを買うつもりじゃなかったんだ。
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f20093d4.jpg"Nils!  ......come on Nils!  come on up!"


















a4ac065a.jpgoh, come on up Nils
旅に出かけよう 準備なんかいらない

春を探しに 空を行けば
初めて見るものばかり




NHK『ニルスのふしぎな旅』より








ニルスは、おそらく僕の最初の記憶である。

放送されたのは1980年1月から1981年3月まで、ということだから2歳から3歳にかけてである。すごく不思議なことだけれど、ニルスのことははっきり憶えている。ニルス、キャロット、ガチョウのモルテン、アッカ隊長、そして主題歌。

2歳児の記憶は曖昧だろうと思う。

でもふとした拍子にこの主題歌を口ずさんでいたり、オープニングの空を行く映像は心に焼きついていて、もう1回観たい、とずっと思っていた。

そこで。DVD BOXを買ったわけである。9枚組、全52話。観ました。全部。
最終話で涙をこぼしたことは言うまでもない。

ニルスの舞台はスウェーデン。腕白少年のニルスは、ある日妖精を怒らせたために、魔法で体を小さくされてしまう。今までさんざんいじめた家畜たちに追われ、ガチョウのモルテンの背中に乗って、渡り鳥の雁の群れといっしょに渡り鳥の故郷ラップランドを目指すことになる、という物語である。

さて、ニルスを見ていて気になったのが『シチュー』である。
やっぱり食べものの話か、とお感じのことと思う。

だが仕方がない。

90ba4f68.jpgこういうのとか。


















ee361ffd.jpgこういった類いだ。

















物語の中では、『シチュー』という単語は一度しか出てこなかったように思う(たぶん)。だから上記画像2枚のうち、上のほうはシチューであるかどうかは判然としない。スープかもしれない。下のほうは紛う方なきシチューである。具がないけれど。


そこで。本日はクリームシチューである。

6363005a.jpg用意するのはブーケガルニ。
セロリ、ローリエ、ローズマリー、タイム。
『ロ』が多い。

ローズマリーとタイムはたまたま冷蔵庫の中にあったので使った。パセリもあるとよかったけれど、ないので省略。










0b8d9469.jpg鶏モモ肉は、黄色い脂を取り除いて、塩、胡椒。

ぶつ切りにしたら、小麦粉をうすくまぶして、皮目からフライパンでソテーする。












6a39e569.jpg両面に焼き色がついたら、白ワインをふりかけるのであるが、なんか、すごい火が入った。

火災報知機が鳴りだす大騒ぎとなったのであった。

でも火災報知機は慣れっこなので、とくに動揺とかしない。










73a73edd.jpg一方、ブロッコリーは下茹でしておく。色が悪くなるので、最後に加える。















759d077f.jpg鍋では、たまねぎとにんじんをバターで炒める。















f8056f11.jpgたまねぎが半透明になったら、ソテーした鶏肉とブーケガルニを入れ、かぶるくらいの水とコンソメキューブを入れて、煮込み開始。














1ecc5062.jpgある程度煮込んだら、じゃがいもを入れる。
















a91ddff1.jpgじゃがいもに火が通ったら、牛乳。量は適当。

塩、胡椒で味を調える。
ここで、塩加減は控えめにしておくことが肝要だ。

なぜなら、この後ブールマニエを入れるからである。









a2b138a7.jpgブールマニエとはこれである。

常温でどろどろになったバターに小麦粉を同量加えて練ったもの。

これでシチューのとろみをつける。

バターに含まれている塩分を考慮して、先ほどの塩を少し控えたのである。味見をして、足りなかったら後で足す。







e1a1f905.jpgここでブロッコリーを入れ、仕上げは生クリームをひとまわしで完成。















52dd3601.jpgなんとなくニルスっぽく、木の器と木のスプーンで。

シチューは、なんともほっとする味である。

作りながら、震災の直後には牛乳が全く手に入らなかったことを思い出した。僅か2ヶ月前のことだ。


もう忘れかけている自分に、ちょっとしゅんとする。





シチューはとってもおいしかったけれど、やっぱり冬の食べ物だ。ニルスでも、シチューが出てくる場面では、窓の外に雪がちらついていた。

作りながら汗をかくようでは、やっぱりちょっと興醒めである。b8724b5e.jpg






 

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5a5e9c5e.jpg最近の器について。

器はそもそも道具であるから、使わなくてはかわいそうだ。そしてよい器というものは、使いたくなる魅力があるのだ。











そんなふうにずっと思ってきて、今もそれは変わらないのだけれど、ほうっておくといつの間にか殖えているのが僕の食器たちである。

街をふらふらしていれば、どうしても雑貨屋さんや古道具屋さんに足が向く。用もないのに立ち寄っては、千載一遇の際会とばかりに、奪うようにして持ち帰ってみたり(もちろん代金はちゃんと支払う)、いや待てよ、もうしまうとこないよなと思って一旦買わずに帰って、結局1週間後にやっぱり諦められなくてもう一度手にしてみたり。

そんな上気した様子や逡巡の跡を、お店の人はどう見ているだろう。あー、またやってるなくらいの温かい眼差しで眺めてくれているといいのだけれど。


さて、そんなふうにしていつの間にかまた殖えた器たちである。使わなくてはかわいそうだ、とはいいながら、新しく仲間入りしたもののほうが食卓に登場する機会はどうしても多くなる。それは、収納にも取り出しにも高度な技術を要する僕の食器棚の、手前の取り出しやすい位置に置かれることが多いからだ。奥のほうに追いやられて登場する機会が少なくなった器たちへの愛情が、少しも薄れたものではないことを、ここに言い訳がましく申し上げておく。


961ba607.jpg岡田直人さんのマグカップ。

少し撓(たわ)んでいて、それがとっても飲みやすいのである。













3a4b21db.jpg緑のボウル。

南フランスの古いものらしい。内側にだけ釉薬がかかっている。













1a257c6e.jpgこの作りの粗さが、おおらかな雰囲気でよい。考えて作ってないところがよい。















ce37a5ed.jpgこれは、現在の食器だが、パキスタンのものである。


上記の古いものと同じように、いい加減に粗く作られているところがいい。











6e5c1c83.jpgこれも岡田直人さん作。

ハガキ大の板皿。和菓子のようなマット感がいい。
焼き海苔を乗せたりしている。

お刺身を盛るのもいいかもしれない。










d4d51794.jpgTEEMAの新色、テラコッタ。

赤い器はあまり持っていない。でも、とってもかわいくて思わず購入。













fc1935e7.jpgARABIAの新シリーズ『Runo(ルノ)』から、ウィンター・スター。

これは春夏秋冬4絵柄あって、ほんとうは全部欲しい。












a545876b.jpg菊の色絵の蕎麦猪口。

黄色と黒の菊の色絵。素敵です。














e7f4d3bb.jpg小皿2種。

ちまちまと小さいくせに、すごく存在感があるのだ。













器というものは、なんでこんなに魅力的なのか。

器は基本的には道具だ。使うために作られたモノには、その形状に必ず、そうなるべき理由がある。
だから美しい。

作り手の仕事ひとつで、その表情がかわいらしくも厳しくもなる。窯に入れば、人の手の届かないところで、微妙な表情の違いが生まれる。

おそらくいろんな要素が縦に横に折り重なるようにして、器の魅力はできている。それを一言で表現することは、おそらくできない。時代や国が違えど、多くの人が器に魅了されてきたのは、『なんか好き』という漠然とした理由が殆どだろう思う。

いろいろ考えたところで、たかが器である。
でも、だからこそ僕は惹かれつづける。


あっついな…。

毎年、5月には最高気温が30度に届くような日があるのだ。
でも、まだ暑い時期のことなど思いもよらない2月や3月にこの話をすると、大抵の人は変な顔をし、時には眉を顰めさえする。

「そんなわけないだろ…」
「とうとう気が振れたか。かわいそうに…」

30度を超える最高気温は梅雨が明けてからのものだと思い込んでいるのだ。
だから梅雨に入ってもいない5月にそんなに気温が上がるわけがないではないか、というのが彼等の論理である。毎年経験しているはずなのに、こうした人々は忘れてしまうのだ。長い冬を必死でやり過ごしている間に、「5月に最高気温30度」の記憶をどこかに置き去りにしてしまう。

だからこうして5月に真夏のように暑かった日には、ざまあみろと言ってやりたい気分である。


さて、そんな凱旋的昂揚感に彩られた買い物の途中、カジキマグロが安かったので買った。

fd41d2da.jpg3切れ398円。

色があんまりよくないね。
でもいいさ。

だって、ラグーソースにするんだから!









嘗て、カジキマグロのラグーで快哉を叫んだのは、いつのことだったか。

おいしかったな。冷やした白ワインで、至福だった。


1437af4a.jpgカジキマグロは1cm角に切っておく。
















2e04bd15.jpgアンチョビを包丁の腹で叩き、ペーストにしておく。












9a49ef2c.jpgセロリとたまねぎをみじん切りにする。
















520a4459.jpgにんにくの香りをオリーブオイルにうつす。














43ca64e9.jpgにんにくがきつね色になったらアンチョビを加える。















905b96af.jpgセロリとたまねぎを加えて、炒めていく。















aba2b6c8.jpgたまねぎが半透明になったくらいで、カジキマグロとタイムを2~3枝。















0455a1e1.jpgカジキマグロの色が変わったら、白ワインをどぼどぼと入れる。

しばらく白ワインで煮込むかんじだ。













96ddd5d9.jpg白ワインの水分が飛ぶまで煮ていく。

かき混ぜたときに、フライパンの底が見えるくらいまで。










10125290.jpg手で潰したホールトマトを入れる。














86c684aa.jpgさらに煮込む。
















さて、ここで。

今回使用した分量は

・カジキマグロ 切り身3枚
・たまねぎ 1個
・セロリ 1本
・にんにく 2かけ
・アンチョビフィレ 2枚
・オリーブオイル 大さじ5
・タイム 3枝
・ホールトマト缶(400g) 1缶

である。
つまり、しっかり2人分の量である。いくら大食いとはいえ、これでは食べきれないし、無理矢理ひとり分作っても、ソースがもったいない。


3c18e00e.jpgそこで。

軽く塩、胡椒をして半分は冷蔵庫で保存。













cb1f2c1a.jpg煮詰まってきたら、パスタの茹で汁でのばす。

塩、胡椒で味を調える。












5a98e619.jpg茹で上がった麺と和えて完成。













0a8153c9.jpgカジキマグロのラグー。

これ。ほんとうにおいしいのである。












0c007428.jpgパンはサンドイッチのときの残り。パン・ド・カンパーニュである。

最近、トーストは焼き網でしか焼かなくなった。パン専用の焼き網を用意して、大活躍中である。

網で焼くと、パンはもちもちになってとてもおいしくなると思う。








1642b9b3.jpgワインはコノスルである。

しっかり冷やす。



















5e0527cd.jpg久々のこのパスタ。

あともう1回食べられる、と思うとちょっとうれしいのである。













5月の暑い日に、与太郎呼ばわりの遺恨を晴らし、いい気分でスパゲティーを食べている。

しかし数ヵ月後、また冬が来れば僕は同じ場面に出くわす。

変な顔で言われるのだ。


かわいそうに、と。


e97a5743.jpg宿屋の主人、パウエル・クワック氏はいつも考えていました。

馭者たちが、馬に乗ったままでもビールを飲むことができる、よい方法はないものだろうか、と。

宿に立ち寄る馭者たちが鐙(あぶみ)の上で手綱を持つために、飲み物を持つことができず、いつも喉が渇いているのをクワック氏は知っていたのです。

宿屋とともに醸造所も経営しているクワック氏は、ある日、まるでフラスコのような形をしたグラスを考案しました。右の肖像画でクワック氏が手に持っているのがそのグラスです。


鐙の上で揺れても、中身がこぼれないそのグラスを使って、クワック氏は自分のところで醸造したビールを馭者たちに振舞ったのでした。

(パウエル・クワック物語 おわり)
 

38dfce8d.jpgベルギーのビールを飲むとき、たとえばシメイにしても、オルヴァルにしても、専用のグラスで供されることが多い。もちろん、上記のような言い伝えのある『パウエル・クワック』を飲むときはもちろんのこと、である。

こういうグラスに興味はあった。そりゃああるともさ。

しかしながら、僕の家は店ではない。あたりまえの話だ。

こうした専用グラスを持っていたって、年に何回か登場する機会があるだけだし、置き場所だってない。




だから、こういうのはお店で飲むときに使うもので家庭に持っておくべきものではないのではないか。








正論だ。実にまっとうな意見である。

しかし、だ。

せっかくのベルギービールだ。このビールを愉しむためにっていうグラスがあったら、それを使いたいと思うのもまた人情というものであろう。それに味だって違うかもしれない。もしもこのグラスを使わないことで、パウエル・クワックの真価を味わえないのだとしたら、あまりに憾みが残りはしないか。

パウエル・クワックの肖像を見よ。せっかく考案したグラスを使わなかったことで、こんな虚ろな目をしたもみあげ男が夢にでも出てきたら、おちおち眠ってもいられない。

などなど。


―もうおわかりかと思う。

d039a2f8.jpg買いました。

パウエル・クワックのグラス。専用スタンドつき。

うれしい。すごくうれしい。

パウエル・クワックは見ての通りのアンバー色をしていて、アルコール度数も高い(8%)。味はわりと穏やかで甘め、香りがよい。
















さて、そんなパウエル・クワックの夜は、ビールに合わせた2品。

31c0f6c9.jpg新たまねぎを輪切りにして、小麦粉とスパイスを少し、ビールで溶いた衣をつけて油で揚げる。













04a80b15.jpgオニオンフライである。

これは、こちらのブログ『はじけるおと』であまりにもそそられたので、実行。


フィッシュ&チップスもそうだが、衣をビールで作るとサクサクにできあがる。








d4a36ff9.jpgサンドイッチ。

先日のサラダに使った生ハムが残っていたので、サンドイッチに。グリーンカール、生ハム、カッテージチーズ、たまねぎの薄切りをマスタードとマヨネーズ、胡椒でソースを作ってパン・ド・カンパーニュで挟む。

今回はバウルーは使用せず。







そろそろ、暑くなってきた。ビールがおいしい。

さて、このグラス。

どこにしまおうか。b8724b5e.jpg


好きな作家やその作品について、同じ趣味を持つ人間と語るのはとても楽しいことだ。

ゴールデンウィークに読んだJ・アーヴィングの『また会う日まで』は、現在友人の手元にある。その友人の来訪があったので、当然話題は『また会う日まで』に集中する。

しかし、友人はまだ上巻の終わりくらいまでしか読み進んでいない。上下巻あわせて1,100ページ超の大作である。読み終えるまでには、もう少し時間がかかるだろう。



さて、小説について、アーヴィングについて、あるいはオルガンについて、フーガの技法について話しながらの食事はこんなものたちだった。


5f8367a4.jpgビールは『ブルックリンラガー』。

久しぶりである。






















3e521a6a.jpgサラダ。

ルッコラ、生ハム、マッシュルームのバターソテー、クリームチーズを適当に。

ドレッシングは、バルサミコ酢、白ワインビネガー、にんにくのみじん切り、塩、胡椒、オリーブオイル。


すごく適当に、特に意図もなく思いついたものを混ぜていっただけなのだが、このサラダがすごくおいしかった。




d833f9ec.jpg鶏のささみとスナックえんどうのマスタードマヨネーズ和え。

スナックえんどうのおいしい時期に頻出するメニューである。









13a5b15d.jpg塩豆。

これ、ついついつまんでしまう罪なやつである。












de036978.jpgあさりバター。

あさりもおいしい時期だ。

白ワイン蒸しの仕上げに、バターをひとかけ入れて、小ねぎを散らす。








9473e1bf.jpgメインはパスタ。

鶏もも肉とほうれんそうのトマトクリームソース。














e26fca2f.jpgワインは、初登場の『neblina(ネブリナ)』。

西荻の酒屋さん『三ツ矢酒店』に行ったら、あの『コノスル』さんの隠し玉!というコピーで売られていて買ってしまった。

おそらくコノスルの低価格ワインという位置づけと思われる。(コノスルでも充分安いけど)






e8d58565.jpgびっくり、650円。

ところがさすがコノスル。香りもよくて満足。

ブルックリンラガーが1本378円と思うと、なかなか考えさせられる価格である。









さて、『また会う日まで』について話していたので、音楽はオルガンをかける。これは小説の主人公ジャック・バーンズの父親が教会オルガニストであることに因む。

J.S.バッハのオルガン作品集(リヒター)を聴きながらワインを飲むわけであるが。しかし。どう贔屓目にみても『トッカータとフーガ ニ短調』は食事をしながら聴くには適さない。


上巻しか読んでいない友人と話しているので、ほんとうはもっと言いたいことがたくさんあるけれど、ぐっと堪えて言葉を飲み込む。下巻にいったらもっといろんなことが起こるのだよ。

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『Pocketful of Poetry』
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『D'ACCORD』
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アトリエサワノのピアノトリオが大好きです。2枚同時発売のうちの1枚。これはピアノトリオにアコーディオンを加えた演奏。明るい休日のランチ。冷えた白ワイン飲みたくなる感じ。

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J.S. Bach/Goldberg Variations
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ゴルトベルク変奏曲からグールドの影を拭いきれないのは仕方がない。この人の演奏には”脱・グールド”みたいな気負いはなく、曲に対してもグールドに対しても愛情に満ちていて、丁寧で、やさしくてすごく好きです。



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