僕は夕方にパンとサラダとハム・エッグを食べ、食後に桃の缶詰を食べた。
翌朝僕は米を炊き、鮭の缶詰とわかめとマッシュルームを使ってピラフを作った。
昼には冷凍してあったチーズ・ケーキを食べ、濃いミルク・ティーを飲んだ。
三時にはヘイゼルナッツ・アイスクリームにコアントロをかけて食べた。
夕方には骨つきの鶏肉をオーブンで焼き、キャンベルのスープを飲んだ。
―『羊をめぐる冒険』/村上春樹(1982,講談社)
村上春樹の小説にビールを飲むシーンと料理を作るシーンが多いのは有名な話だ。
引用したのは、『僕』が『鼠』と呼ばれる友人の別荘でひとり、『鼠』の登場を待ちながらひたすら料理をする場面の一部である。『僕』は暇にまかせて実にいろいろと料理を作る。ロースト・ビーフ、鮭のマリネ、たらことバターのスパゲティー、「頭を整理するために」ハンバーグ・ステーキ、さらに「パンの焼き方」の本を見ながら、パンまで焼いている。
この人の小説を読んでいると、たまらなくビールを飲みたくなるし、たまらなく料理をしたくなる。それもごく丁寧に。自分だけのために。
レシピ本も存在する。
『村上レシピ』
台所で読む村上春樹の会/編(飛鳥新社、2001)
村上作品に登場する料理を専門家の協力のもとにレシピ化した本。
どれも手軽にできるようにレシピ化してあるので、興味のある方は挑戦してみると面白いと思う。
さて、この中から僕が気に入って何度も作っているメニューがある。先ほどの別荘のシーンにある『鮭の缶詰とわかめとマッシュルームを使って』作るピラフだ。
レシピは上述の『村上レシピ』に従っている。
材料:鮭の缶詰、マッシュルーム、わかめ(乾燥)、ごはん*1、タイム*2、オリーブオイル、塩、胡椒。
*1 『村上レシピ』にも指摘があるとおり、本来ピラフは炊いていない米を炒めてスープで炊くが、ここでは小説に従って炊いたごはんでチャーハン風に作る。
*2 小説には記述がないが、鮭缶の生臭さを消すためにタイムを使う。
具の下ごしらえ。
鮭缶は缶汁を切り、身をほぐす。マッシュルームは2~3mmにスライス。わかめは水で戻して、水気をよく切る。
マッシュルームをオリーブオイルで炒める。
鮭を入れ、火が通ったらごはんを入れて炒める。
ごはんに油がまわってほぐれてきたら、わかめとタイムをいれ、塩・胡椒で味を調える。
※実は写真に間違いがあります。鮭とごはんを入れるタイミングが逆でした。すみません。文章に書いてある順番が正解です。
全体をよく混ぜ炒めたら完成。
これはすごく手軽にできるし、とてもおいしいので気に入っている。タイムはなくても構わないし、鮭缶とわかめは保存が利くものなので食べたいときに作ることができる。
本日のビールはこちら。
ドイツの『ヴァイエン ステファン ヘフヴァイス』という白ビール(小麦のビール)。
吉祥寺にある雑貨屋さん『Roundabout』の店主、小林さんが「吉祥寺のフードショーに売っている白ビールがおいしい」と教えてくれたもの。たぶんこれであってると思うのですが…。
酵母の香りがすごくいいビール。自然な香り。ヒューガルテンなどの白ビールはスパイスを加えてあってちょっと苦手だが、これはとてもおいしかった。すばらしいビールだと思う。ピラフとの相性もよかった。
今日もまたたくさん食べてしまった。
小説の主人公『僕』はこう言う。
―僕は再び太りつつある。
やれやれ。
何となく食べたくなったので、鶏のからあげを作った。
揚げ物は片付けが面倒なので、ひとりのときに作ることはまずないのだけれど、食べたくなってしまったものはしょうがないのである。
鶏もも肉は黄色い脂肪を取り除く。酒、醤油、胡椒、しょうがの絞り汁でつけ汁をつくり、適当な大きさに切った鶏肉に揉みこむような感じで下味をつける。
あとは小麦粉と片栗粉を1:1で混ぜた粉をつけて揚げるだけだが、この揚げ方が重要だ。
まずは油の温度を低めして、じっくり揚げる。きつね色にならないくらいで一度取り出す。5分程度おき、油を高温にし、きつね色になるまで揚げる。
『二度揚げ』である。これをやると中はふっくらジューシー、外はカリカリという言い古された言い回しのからあげができあがる。
ところで写真に写っているビールはバドワイザーである。酒屋さんで見かけて何となく買ったのだが、味のないビールだった。
西荻に来て最初の正月ということもあり、我が家で新年会ラッシュが続いている。
先週、2日連続で違うメンバーと新年会をした。作ったメニューはほぼ同じ。それぞれにお持ち寄りがあったりするので多少異なる。
このいかにも新年っぽい光景は、ミニお重におせちを詰めて持ってきてくれた友人がいたのでこうなった。
敢えて和室にちゃぶ台でやってみたら、貧乏夫婦の倹(つま)しい正月のようで涙ものであった。
おせちはとてもおいしかったです。家庭の味。
サラダ。
水菜とベビーリーフ、ツナに柚子ぽん酢ドレッシングをかけて、いりごまを散らす。
カヴァ(スペインのスパークリングワイン)/ロジャー・グラート
タコとじゃがいものレモンマリネ。
肉!
パスタ。
きのこのクリームソース。
このほかにも、友人が焼いてきてくれたグジェール(非常においしかった!)など。
正月気分ももういいだろ、という感じだが、新年会ラッシュはつづく…。
先月、ローズマリーの鉢植えを買った。
今のところ元気でいる。
ローズマリーだから当然料理に使う。
日の光をたっぷりと浴びて、香りのいいハーブになってくれよー。
これでうまく育てられるようなら、バジルにも挑戦してみたいと思っているのだが、人から聞いた話だとバジルには虫がつきやすいという。いつの間にかレース状になっていた、というのだ。
鉢植えは枯らしてしまうと精神的ダメージが大きいので、強い子がいいな、とも思う。
ローズマリーを選んだ理由は3つ。
-
よく使うハーブだから。
-
使いたいときに手に入らないと困るから(イタリアンパセリなんかはそんなに困らない)。
-
なんか丈夫そうだから。
実は昔、鉢植えを枯らしたことがある。ガジュマルというマングローブみたいな木で丈夫なはずだったのだが。三鷹台のアパートの理想的な日照をもってしても枯らしてしまった。
表参道の『Farmer's Table』で買ったから必要以上に高かった(値段が)のに。
そんな苦い経験もあり、植物を育てることにささやかな抵抗はあったが、思い切って育て始めた。意外とローズマリーが手に入らない、ということに気づいたからだ。スーパーでもハーブ類は毎日入荷するわけではないらしく、昨日はあったけど今日はないとかいうことが多かったのだ。
いざ何かを作ろう、という段になって食材が手に入らないというのは憤懣やるかたないので、ならばベランダからいつでも摘んでこられるようにしようと思ったのだ。
ハーブはドライの瓶詰めでいいんじゃないの?という向きもあるかもしれない。
違う。
たとえば、レストランでカプレーゼを注文したときに、モッツァレラとトマトの薄切りの上にドライバジルがふりかけられていたらどうだろう。皿ごと床に叩きつけるか。
「料理に使うハーブは絶対にフレッシュ。ないなら入れないほうがましだと思う。(中略)なぜって、フレッシュとそうでないものはまったく別の食材だから」
―『ラ・ベットラの定番スパゲティー』(落合務/幻冬舎、2001)
『生のしいたけが手に入らないといって干ししいたけをもどして網焼きにしたり、干物で刺身は作りません。』とこの本には続く。
そう。
いつでも生のハーブを使うことができるように、育てるのだ。
我がローズマリーも鉢に植わったままドライハーブに、なんてことだけは避けたいと思う。
何が好きってプリンが好きだ。
フィルムを剥がして、つるりとした表面にスプーンを差し込むひとすくいめが好きだ。
カラメルソースに届くか届かないかのところで、破かないように神経を使いながら削るようにして少しずつ食べるのが好きだ。
カラメルソースに届いたら、あとは一気呵成。ここでもったいぶっては貧乏ったらしい。甘くほろ苦いのを一気に流し込む。
ああ、終わってしまった。
プリンはちょっと足りないくらいがちょうどいい。たまごの香りとカラメルの苦味の余韻を味わったら、ひとつ息をついて、それでおしまい。
プリンはやはりあの馥郁たるたまごの香りが魅力だと思う。だからたまごたまごした固めのプリンが好きだ。
モロゾフ。
やはりコレですよ。
生クリームをふんだんに使ったプリンもどきみたいなのが跋扈する世の中で、こういう基本を貫く姿勢が好きだ。
味の好みは人それぞれなので、独断には顰蹙する向きもあろうが、敢えてこう言わせていただく。
『なめらか』? 『とろけるような口どけ』?
けっ。
あんなもんプリンじゃねえ。
でも『プッチンプリン』は好きです。
これはまた別の意味でスタンダードだと思う。
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『Pocketful of Poetry』
Mindy Gledhill
この数ヶ月、僕は「ミンディ・グレッドヒルは分かってる!」と叫び続けてきた。この人のアルバムからはポップってのはこういうものさ、という自信が滲み出ていると思う。tr. 2『Trouble No More』がツボ中のツボ。僕の好物ばっかりいっぱい詰まってる。決して大袈裟な表現ではなく、棄て曲なし、最高に幸せな30分あまり。
『D'ACCORD』
SERGE DELAITE TRIO with ALAIN BRUEL
アトリエサワノのピアノトリオが大好きです。2枚同時発売のうちの1枚。これはピアノトリオにアコーディオンを加えた演奏。明るい休日のランチ。冷えた白ワイン飲みたくなる感じ。
J.S. Bach/Goldberg Variations
Simone Dinnerstein
ゴルトベルク変奏曲からグールドの影を拭いきれないのは仕方がない。この人の演奏には”脱・グールド”みたいな気負いはなく、曲に対してもグールドに対しても愛情に満ちていて、丁寧で、やさしくてすごく好きです。