熱はもう下がった(といってもほんの微熱だったけれど)。
食欲もある。
そんなわけで、本日は胃にやさしい感じの和食だ。サボりともいえる。
味噌汁を久しぶりに作った。前回いつ作ったのか思い出せないくらいだ。今日はほうれんそうの味噌汁。
別に味噌汁が嫌いなわけではない。
正直面倒くさいのである。
メイン(らしきもの)はこれ。
おあげを焙っただけ。
しょうが醤油でいただく。
そしてこれ。
京くらま林のちりめん山椒。
ごはんがすすむ味です。
食卓にお酒が上らなかったのはどれくらいぶりだろう。
こういう食事もいいものだなと思った。気分が澄む。後片付けも楽だし。
我が台所のほぼ中央に鎮座する、どう見てもゴミバケツという風采のこいつ。
こいつを僕は何に使っているのか。
ゴミバケツとして使っているのである。
これを使う前は、ごく一般的なブラバンシアのペダルビンを使っていた。足踏みペダルを踏むと蓋がぱかっと開くあいつだ。真っ白。
便利だったけど、真っ白が汚れていくのがイヤだった。
台所に置いてあれば、どうしたって汚れる。油と埃が混ざったあのベタベタがいつの間にか蓋の上に薄く降り積もっている。もとが真っ白のピカピカなものだから、その様子は何とも情けなくて胸が塞がる。きれいに掃除しても、時間がたてば同じことだ。またあのいやったらしいベタベタが…。
そんなある日、吉祥寺の『a ・ Pex』という北欧の中古家具店でこのバケツに出会ったのだ。『a ・ Pex』の家具は値段が高いのでとても買えない。見るだけ。そんな気持ちで入ったら、こいつがいた。しかも3000円。すぐに買って帰った。
いつ頃のものかわからないけど、古いものだ。形もちょっと歪んでるし、全体に錆を纏っている。しかし、歪みも錆もこのバケツはちゃんと受け入れている。寧ろ、それをモノとしての力に変えているようにも思える。戦士の疵痕が勲章なのと同じように、このバケツは錆びて歪んでも実に堂々としている。
僕が古いものを好きなのはそこだ。
モノは使っていれば、汚れる。疵がつく。壊れてしまうことだってある。でもそうしているうちに、ふと、疵や汚れが魅力に変わる瞬間があるのだ。
僕はブラバンシアのペダルビンにその魅力を感じることができなかった。
さて、このバケツが来てからというもの、汚れのことなんか気にならない。たまに雑巾で拭くだけ。何せ汚れは力だ。汚すことでバケツを育てているような気さえする。
ところで、買ってきて洗っているときに発覚したのだが、こいつ、水が漏るのだ。バケツのくせに。中にゴミ袋を入れて使っているから、実用上は問題ないのだけれど。
雪が降ったりしているけれど、春はもうすぐという感じである。野菜で季節を感じる、というのが実は大好きです。
今年の春は、グリーンピースとか蚕豆をたくさん食べよう!と思う。冷凍で一年中食べられるけれど、出盛りの生の青臭いような香りは旬のものでなければ味わえない。
さて、グリーンピースはベーコンと一緒にクリームソースのパスタにする。
何年か前、新宿の髙島屋に入っていた「パストラペ(PASTO LA PAIX)」(今はもうないと思う)で食べておいしかったので作るようになった。作り方は自己流だけれど。
【材料】
グリーンピース1パック、ベーコン(ブロック)150g、たまねぎ1/2、生クリーム1パック(200ml)、牛乳50ml、パルミジャーノレッジャーノのすりおろし 大さじ3、バター10g、サラダ油少々、塩、胡椒、スパゲティー
※ブロックのベーコンを残すのが面倒だったのでひとかたまり使ってしまったが、多かった。ふたり分で100gもあれば充分です。
グリーンピースは下茹でする。
お湯を沸かして塩を少々。ひとつ食べてみてほこほこになっていればOK。
ベーコンは厚めにスライスして、2cm幅に切る。
たまねぎはくし形に切る。
フライパンにバターとサラダ油を入れ、バターを融かす。
中弱火でたまねぎを炒める。
余談だが、僕はこの『バターでたまねぎをいためているときの匂い』がこの世で一番好きだ。
たまねぎが半透明になってしんなりしてきたらベーコンを入れ、じっくり炒める。火は中弱火のまま。たまねぎとベーコンの旨みを染み出させるつもりでじっくり炒める。
このくらいまで炒めたらOK。
たまねぎが茶色くなるまで炒めてしまうと、クリームソースが白く仕上がらない。
白ワインをふりかける。
生クリームと牛乳を入れる。
ここで火は弱火にする。あまりぐつぐつさせると香りが飛んでしまう。
煮詰まってきたらパスタの茹で汁、または牛乳でのばす。
パスタを茹で始める。
パスタの茹で時間が残り3分くらいになったら、グリーンピースを入れる。
塩※1、白胡椒※2で味を調える。
※1 後でパルミジャーノを入れるのでその塩分も考慮して味を決める。
※ 2別に黒胡椒でも構わないですが、クリームソースの色をこわさないように白胡椒にしました。
茹で上がったパスタ、パルミジャーノレッジャーノのすりおろしを入れる。
チーズを溶かし込むようにしっかり和えたら完成。
クリームソースのパスタは久しぶりである。
重めのソースでベーコンも入っているので、赤ワインにした。
コンチャイトロ/カッシェロ・デル・ディアブロのカベルネ。
チリワインの代名詞的存在。
ワインを飲んでいるうちに、気分がよくなって、井上陽水を聴きながら食べた。僕は70年代の井上陽水が好きです。
何だか、すごくお腹がすいたので、ほんとは出掛けようと思っていたのを、ちょっと後にまわして、ランチを作った。
『ツナとわかめとマッシュルームのピラフ』だ。
以前ここで紹介した『羊をめぐるピラフ』の変形です。
http://sekiya.blog.shinobi.jp/Entry/44/
家にあるのがこの食材だったので、こうなった。
そしてランチビアしてしまう。すごくいい気分だけど、後がだるくなる。
でも僕は絶対負けない。だるさなんかに。
【材料】
ツナ、わかめ、マッシュルーム、タイム、ごはん、オリーブオイル、塩、胡椒、白ワイン
マッシュルームは薄切り、わかめは戻してざく切り。ツナは缶汁を軽く切る。
オリーブオイルでマッシュルームを炒める。
続いてツナ、わかめを入れて炒める。
白ワインをふりかける。
ワインの水分を飛ばすように炒める。
ごはんとタイムを入れてさらに炒める。塩、胡椒で味を調える。
ごはんが紫色をしているのは、十六雑穀なんとかを入れて炊いたからです(先日のものを冷凍しておいた)。
冷凍のごはんを炒めるとどうしてもちょっとべしゃっとしてしまう。仕方ないか…。
お腹いっぱいになりました。
ビールで気分も上々だ。
そろそろ出掛けるか。これから塩を買いに行かなければならないのだ。
西荻に引越す時、破損はゼロだった。
食器類が多いから、ガラス製品のひとつふたつは割れてしまっても仕方がないかな、と思っていた。
ただ、どこかに消滅してしまったものがある。
パン切り包丁である。
紛失というより、自分で捨ててしまったのかもしれない。あまりいいものじゃなかったから、引越すのだし、買い換えればいいやと思って捨てて、そのことを忘れてしまった。という可能性が高い。
普通の包丁ではパンは切りにくい。バゲットなどのハードタイプは特にそうだ。力を入れて外側の固いところを切ろうとすると、せっかくふかふかの内側がつぶれてしまう。まだ温かい焼きたてのパンを買ってきたのに、自分でつぶしてしまうなんてのはどうにも癪に障る。
そこで、我が台所に新入生君の登場となった。
ヴィクトリノックス(VICTORINOX)のパン切り包丁である。
スイス出身。
刃物は、日本製のものが世界で最も優れている。
世が明治になり、廃刀令発布。廃業した刀鍛冶たちは挙って包丁職人へと鞍替えする。だから今でも日本の包丁には日本刀の技術が活かされている。
だが、パン切り包丁だけは別だ。パン食の文化がまだ浅い日本より、ヨーロッパのほうが先を行く。
日本のものも(ものによっては)悪くはないのだそうだ。ただ、実際に刃を触って較べてみて感じた。「日本のものはナマクラだ※」と。
吉祥寺東急の刃物売り場の人は言う。「パン屑の量と断面が違う。」
※ただし、値段は日本製のほうが安い。
まず材質が違う。刀身部分も柄の木の部分も。そして、刃のアールのつき方もぜんぜん違う。長い歴史が培ってきたノウハウを感じる。
さて、例えば柳刃で刺身を切るとき、「刺身を引く」という。ノコギリも「挽く」という。いずれも手前に引いて切ることからこういう。
パンだってそうだ。
固い外側を、長い刀身全体を使ってノコギリを挽くようにして切る。上から押さえつけるようにしてはいけない。あくまで平行に引くつもりで切る。こうすれば、やわらかい中のふかふか部分はつぶれることなく、きれいに切ることができる。
パン切り包丁君、これからよろしくね。
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『Pocketful of Poetry』
Mindy Gledhill
この数ヶ月、僕は「ミンディ・グレッドヒルは分かってる!」と叫び続けてきた。この人のアルバムからはポップってのはこういうものさ、という自信が滲み出ていると思う。tr. 2『Trouble No More』がツボ中のツボ。僕の好物ばっかりいっぱい詰まってる。決して大袈裟な表現ではなく、棄て曲なし、最高に幸せな30分あまり。
『D'ACCORD』
SERGE DELAITE TRIO with ALAIN BRUEL
アトリエサワノのピアノトリオが大好きです。2枚同時発売のうちの1枚。これはピアノトリオにアコーディオンを加えた演奏。明るい休日のランチ。冷えた白ワイン飲みたくなる感じ。
J.S. Bach/Goldberg Variations
Simone Dinnerstein
ゴルトベルク変奏曲からグールドの影を拭いきれないのは仕方がない。この人の演奏には”脱・グールド”みたいな気負いはなく、曲に対してもグールドに対しても愛情に満ちていて、丁寧で、やさしくてすごく好きです。